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抜け毛が増えた気がするとき|変化の見方と記録のしかた

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洗面台で髪の変化を静かに確かめる大人女性をやわらかく描いた水彩イラスト風のアイキャッチ

洗面台の排水口にたまった髪、ブラシに絡んだ毛、朝起きたときの枕元。ふとした瞬間に目に入る抜け毛の量が、以前より多くなった気がする。一度そう感じ始めると、これまで気にも留めなかった場面まで目につくようになって、なんとなく落ち着かない日が続きます。

かといって、家族に話しても「気のせいじゃない?」で終わってしまう。自分でもそう思いたい気持ちがある一方で、この程度のことで病院に行くのは大げさな気もする。多くの方が、この間で立ち止まったまま時間が過ぎていきます。この記事では、抜け毛の変化を自分で見るときに何を手がかりにすればよいのか、どう記録しておけば後々役に立つのか、そして専門機関に相談するかどうかをどう考えればよいのかを、順を追って整理していきます。

手がかりになるのは本数ではなく、以前のご自身との差

先にお伝えしたい要点は、抜け毛の量を判断するときに頼りになるのは「一日に何本まで」という一般的な目安ではなく、以前のご自身の状態と比べることだという点です。

本数の目安は、調べればさまざまな数字が出てきます。けれど、その数字を自分に当てはめようとすると、途端に難しくなります。髪が長い方ほど抜けた毛は目立ちますし、二日ぶりに洗った日は一日分より多く見えます。洗う前にブラッシングをするかどうかでも、排水口にたまる量は変わります。同じ人が同じ日に数えたとしても、数える場所を変えれば結果は違ってきます。つまり本数は、体重計の数字のように条件をそろえて比べられるものではないのです。

一方で、「去年の夏はここまで気にならなかった」「三か月前の写真と比べると分け目の見え方が違う」という比較は、条件さえそろっていれば意味を持ちます。基準になるのは、平均的な誰かではなく、以前のご自身です。そして、この比較を可能にするのが記録です。気になり始めた今日から残しておけば、三か月後には比べられる材料が手元にあります。

もうひとつ、記録には別の役割もあります。専門機関に相談することになったとき、経過を正確に伝えられるという役割です。診察の時間は限られていますし、「なんとなく前より多い気がして」という説明だけでは、いつからどう変わったのかが伝わりません。写真とメモがあれば、その数分の会話の中身が変わってきます。

抜け毛の変化を自宅で記録する3つの手順を示した図解

量が変わって感じられる背景には、いくつもの要素があります

記録の話に入る前に、抜け毛の量が変わったように感じられる背景を整理しておきます。ここを知っておくと、記録したものをどう見ればよいかが分かりやすくなります。

髪には生え変わりの周期があります

髪は一本一本が同じタイミングで抜けているわけではなく、それぞれが独立した周期で生え変わっています。成長して、いったん成長を止め、休んだのちに抜け落ちる。この周期の中で「そろそろ抜ける段階」にある髪が、たまたま同じ時期に重なれば、目に入る量は多くなります。周期そのものの仕組みは年齢とともに髪が細くなるのはなぜ?ヘアサイクルの基礎で扱っていますので、背景をもう少し詳しく知りたい方はあわせてご覧ください。

日によって量が違うのは、この周期の重なり方に加えて、前回洗ってからの日数やその日の扱い方が影響しているためだと考えられます。ですから、昨日と今日を比べることには、あまり意味がありません。

時期や出来事が重なることがあります

抜け毛の量が変わったと感じるタイミングには、ご本人の生活の変化が重なっていることがあります。出産後の一時期に抜け毛が多くなることはよく知られていますし、その時期ごとの向き合い方は産後の抜け毛はいつまで続く?時期ごとの向き合い方にまとめています。

このほか、体調を崩したあと、生活のリズムが大きく変わったあと、食事の量が減っていた時期のあとなど、何かの出来事から少し遅れて変化を感じるという声も伺います。だからこそ、記録には抜け毛のことだけでなく、その時期に何があったかも書き添えておく価値があります。後から見返したときに、点と点がつながることがあるからです。

原因を一つに決めつけないでおきます

インターネットで調べていると、「これが原因だ」と言い切ってくれる説明に出会います。分かりやすい説明はありがたいものですが、実際にはそう単純ではありません。

日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aは、女性型脱毛症について「男性ホルモンの影響に関して明確なデータはなく、女性ホルモンの状態など様々な理由により生じている場合が多いと考えられています」と説明しています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A Q8「女性型脱毛症は男性型脱毛症とちがうのでしょうか?」)。専門の学会が、原因を一つに絞らない書き方をしているということです。

これは読者にとって、実はよい知らせでもあります。原因が一つに決まっていないということは、自分で原因を突き止めてから動かなければいけない、ということではないからです。記録の役割は原因を当てることではなく、変化があったかどうかと、それがいつごろからかを残しておくこと。原因の見分けは、頭皮を直接見られる立場の人に委ねてよい部分です。

自宅でできる、記録のしかた

ここからは具体的な方法です。難しい道具は必要ありません。スマートフォンが一台あれば足ります。

同じ条件で写真を残す

いちばん大切なのは、条件をそろえることです。撮る場所を決め(洗面所など、いつも同じ照明の場所が向いています)、髪を乾かした状態で、分け目の位置も同じにして撮ります。時間帯もそろえられると、なお比べやすくなります。

撮る箇所は三つを目安にしてください。分け目を真上から、つむじを真上から、生え際を正面から。自分で撮ると角度が毎回ずれてしまいがちなので、洗面所の鏡越しに撮る、家族に頼む、スマートフォンを棚に立てかけてタイマーを使うなど、やりやすい方法を決めておくと続きます。

頻度は月に一度で十分です。「毎月一日に撮る」のように日を決めてしまうと、忘れにくくなります。撮った写真は専用のアルバムにまとめておくと、後から並べて比べやすくなります。

数ではなく、状況を書き添える

写真と一緒に、その時期の状況を数行だけ残しておきます。前回洗ってから何日たっているか、体調はどうだったか、生活の中で大きな変化があったか。抜け毛の量そのものを数字にする必要はありません。

書くことに気が進まない日は、写真に一言だけ添えるので構いません。「今月は寝不足が続いた」「先月から食事の時間が不規則」。そのくらいの粒度でも、三か月分並べば流れが見えてきます。反対に、細かく書こうとして続かなくなるほうが惜しいところです。

見比べるのは、数か月の流れで

記録が溜まってきたら、見返すのは月単位にしてください。毎日鏡の前で確かめていると、その日の髪の乾き具合や光の当たり方で印象が変わり、気持ちだけが上下してしまいます。

三か月分の写真を並べたときに、分け目の幅の見え方が変わっていないか。生え際の印象が違わないか。そこに変化が見て取れないのであれば、少なくとも短期間で大きく動いてはいないということです。そして変化が見て取れるのであれば、それは相談するときの具体的な材料になります。どちらに転んでも、記録は無駄になりません。

記録で分かること、分からないこと

ここで、記録の限界もはっきりさせておきます。記録で分かるのは「変化があったかどうか」と「いつごろからか」の二つです。分からないのは「なぜそうなっているのか」です。

原因を見分けるには、頭皮の状態を直接見る必要があります。写真では、髪の下に隠れている地肌の様子や、毛穴の状態までは写りません。ですから、記録をどれだけ丁寧に取っても、それが診断の代わりになることはありません。記録は、相談を始めるための材料であって、相談の代わりではないという位置づけです。

そのうえで、次のような状態に心当たりがある場合は、記録を続けながら様子を見るのではなく、皮膚科や女性の薄毛を専門に扱うクリニックに相談することを検討してみてください。

相談先をどう選べばよいか迷ったときは、女性の薄毛は何科に相談する?皮膚科と専門クリニックで、それぞれの特徴と選び方を整理しています。

相談することを、治療を始める決断だと重く受け止める必要はありません。今の状態を知り、これからどうするかを判断するための材料をもらう場でもあります。「まだ様子を見ていい状態ですよ」と言われて帰ってくることも、十分に意味のある結果です。気になり続けたまま一年を過ごすより、その一言をもらうほうが、日々の落ち着きが違ってきます。

美容師の現場から

セルフケアで様子を見るか専門機関に相談するかを考えるときの3つの手がかりを示した図解

気になった今日を、比べられる起点にする

抜け毛の量が多くなった気がするという感覚は、本数を数えても確かめられません。確かめられるのは、以前のご自身との差だけです。そしてその差を見るためには、比べられる形の記録が要ります。だからこそ、気になり始めた今日が、いちばん早い起点になります。

同じ条件で写真を撮り、その時期の状況を数行添え、見返すのは月単位で。それだけのことですが、三か月後には「変わっていない」あるいは「ここが変わった」という答えが手元に残ります。どちらの答えであっても、漠然とした不安が具体的な情報に変わることに変わりはありません。

そして、頭皮に症状を伴うとき、変化が続いているときは、記録を持って専門機関の力を借りてください。原因を自分で突き止めてから行く必要はありません。日々のケアと専門家の目、その両方を使いながら、ご自身のペースで髪と付き合っていきましょう。

参考にした情報

よくある質問

Q.1日に抜ける髪の本数の目安は、どのくらい参考になりますか?
A.本数の目安はよく話題になりますが、ご自身に当てはめるのは思うより難しいものです。髪が長い方ほど抜けた毛は目立ちますし、二日ぶりに洗った日は一日分より多く見えます。数える場所を変えるだけでも結果は変わります。数字そのものより、以前のご自身と比べてどうか、いつごろから変わったと感じるかのほうが手がかりになります。
Q.排水口にたまる量が日によって違うのですが、気にしたほうがよいでしょうか?
A.髪には生え変わりの周期があり、抜けるタイミングは一本ずつ異なります。前回洗ってからの日数やブラッシングの有無でも、その日に目に入る量は変わります。数日単位の上下よりも、数週間から数か月の流れとして変化があるかどうかを見るほうが、判断の材料になりやすいと考えられます。
Q.写真を残しておくと、受診するときに役立ちますか?
A.役立つ場面は多いです。診察は限られた時間で行われるため、いつごろからどう変わってきたのかを言葉だけで伝えるのは難しいものです。同じ場所・同じ明るさで撮った写真が数枚あると、経過が伝わりやすくなります。撮影日が記録として残るようにしておくと、より確実です。
Q.記録を続けていれば、自分で様子を見ていて問題ないでしょうか?
A.記録は状態を把握する助けになりますが、原因を見分けるためのものではありません。頭皮に赤みやかゆみなどの症状を伴う場合や、気になる変化が続いている場合は、記録を持って皮膚科や女性の薄毛を専門に扱うクリニックに相談することを検討してみてください。
Q.家族に話しても気のせいだと言われてしまいます。
A.毎日顔を合わせている相手ほど、少しずつの変化には気づきにくいものです。だからこそ、同じ条件で撮った写真という形が残る材料が役に立ちます。ご自身の感覚を疑う必要はありません。気になっているという事実そのものが、確かめてみる十分な理由になります。

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